社会体制を対象とする社会科学の研究
社会体制を対象とする社会科学の研究が苛烈な弾圧にさらされたのはさることながら、日本の社会を対象とする日本史学の運命もまたこれに劣らないものがあった。しかも、天皇制政府が、「国体の淵源」を『古事記』『日本書紀』の?神代?説話に求め、学校の歴史教育の冒頭で?神代?説話を歴史的事実として教えるよう強制した結果、日本古代史の科学的研究は極度に困難となった。そればかりでなく、日本史の古今を通じて、その社会構造や歴史的矛盾を科学的に析出することにも政治的妨害が加えられたから、日本史全般にわたり、いたるところで科学的研究の伸展が阻止されてきた、といってよいであろう。近代科学が、一部に世界的な業績を生み出すまでに、日本の学界で大きな進歩を遂げた一面を持ちながら、他方、社会全般にわたり、非科学的?非合理的な物の考え方が根強く生きつづけているという矛盾は、要するに、明治以後の日本国家が、近代科学の受容に対して示した以上の姿勢にその根源を持っていたと結論できるのである。
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